接着芯は、縫製を容易にし、仕上がりの構築的なラインを整える為、悪いとは限りません。
とりわけ低価格の生地、もしくは高額な柔らか過ぎる生地については、それが用いられる傾向が多いです。
顧客は接着芯の使用の有無を、確認する術はありません。
鏡に映るスーツの内部にべったりと貼られたフィルムは、ハサミで裏地を切らないでもしない限り、その姿を現しません。
接着芯はスーツの生地を硬くします。同じゼニアの生地でも、エルメネジルド ゼニアのブティックで吊られているスーツが、他のそれとは全く違って良く見えるのは、目の錯覚ではありません。
本来の光沢、その柔らかな質感は、接着芯によって損なわれ、その美観は低下します。
接着芯はバンチブックでご覧になった、その生地のまさに裏側に、糊を使って、二重になるよう当て布されます。
袖や背中、パンツに使用されることは無く、その範囲は、胸からウエスト、そして裾までの、前側のスーツの内部にあたります。顧客は、裏地にハサミを入れた時、初めてその姿を見ることが可能になります。
襟の淵が、ぷくぷくと波打つのは、接着芯の影響によるものです。
経年によって、ところどころ表生地から剥がれた接着芯のスーツは、例えるならシールを貼る際に、空気が入ってポツポツと膨らんでしまったような外観となります。フル毛芯、半毛芯などの毛芯が及ぶ範囲に関係なく、接着芯は使用されます。
MANDARIN MTM CLOTHING では、伝統的なイタリアンテーラリングの手法を踏襲し、全てのインポートファブリックは、一切の接着芯が廃され製作されます。